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2019年12月13日 (金)

必要な統計データが収集されていない為に、高齢ドライバーに関する重要な事実が埋もれてしまっている現実

 
簡単に言うと、今までやってこなかったけど、「各年齢層別の、走行距離の統計データを全国で収集しましょう」
そうすれば、おそらく「80歳代のドライバーと30歳代のドライバーでは、同じ走行距離あたりの死亡事故を起こす確率が数十倍も違う」という結果が出ますよ!という内容です。
このデータがない為に、2019年10月29日に総理大臣官邸で開かれた未来投資会議では「75歳以上のドライバーによる死亡事故は、75歳未満の2倍以上」との、ぼやけ過ぎた報告がなされる事態になっています
 
 

もう数カ月前のことなんですが(何年もブログを休んでいたので書くのが遅くなってしまいました)、以下の記事に賛同が集まっていました。

 

高齢ドライバーの事故が急増というウソ。統計データでは高齢者の起こす死亡事故は激減している(carview!) | 自動車情報サイト【新車・中古車】 - carview!
https://carview.yahoo.co.jp/news/market/20190620-10420787-carview/

 

この記事は、警察庁が発表している統計「原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たりの死亡事故件数の推移」を読み取って評価することによって記述されています。

 

高齢ドライバーが起こす死亡事故は前年度よりも大きく減っている。マスメディアの報道はねじ曲がっている」と、要約できます。

 

賛同意見には「そのとおりだ。マスコミ報道はいつも、ねじ曲がっている」みたいものが多いです。

 

確かに、高齢ドライバーが起こす死亡事故の件数や率自体は減っているのですが、今は団塊の世代が後期高齢者に達していない凪の時期に過ぎないかもしれません。私だったら、同じデータを元に、次のように読み解くところです。

 
  1. 何とかして、統計上有意な、年齢層別、単位免許保有者あたり、単位走行距離あたりの死亡事故率を算出すべきだ(=今はない)
  2. マスコミ報道や社会政策等の影響によって、高齢ドライバーのペーパードライバー化が進んでいる(と推測できる)
 
それともうひとつ、
 
  1. 80歳代のドライバーと30歳代のドライバーでは、同じ走行距離あたりの死亡事故を起こす確率が数十倍も違う(と推測できる蓋然性がある)
 

上記(2)と(3)で共に「推測」という言葉を用いている理由は、直接の証拠となる、上記(1)の統計データがいまのところ存在しないからです。

 


(1)の走行距離の情報を含んだ統計データが存在しない為に、(2)と(3)という、もし直接の証拠となるデータが存在すれば、かなりインパクトのあるニュースとなって報道されるような重要な情報が推測でしか捉えられなくて、埋もれてしまっているのです。そして、極めて表層的な「高齢ドライバーが起こす死亡事故は実は減っている」という捉え方が耳目を集めることになってしまっているのです。高齢ドライバーの方々の運転が安全になったわけではないのに、です。

 


同様なデータを元に同じ表層的な捉え方をした記事は他に「暴走老人による死亡事故」は激減していた なぜ今の老人は身勝手にみえるのか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)https://president.jp/articles/-/30280もあります。また、経済評論家の森永拓郎氏もラジオで同様の意見を主張していました※。

でも、もし、警察庁が収集・発表する統計データに年齢層別の走行距離情報が含まれていれば、みんなそっちに注目するでしょうから、こんな記事や主張がが相次ぐ事態にはなっていないでしょう。
※前者は統計データ分析家、後者は元経済企画庁です。共に世間的には“統計の専門家”の2人がこの主張とは、ちょっと唖然とします。

 
 

ここからは、私が(2)、(3)だと推測する理由と、(1)を収集する方法を簡単に説明しておきます。

 
 

「高齢ドライバーのペーパードライバー化が進んでいる」と推測できる理由

既に述べたように直接証明するデータはないので、消去法での推測となります。

 

たとえば当該記事には、85歳以上のドライバーが死亡事故を起こす確率は前年比で28.6%、70歳~74歳についても27.2%も減っていることが記述されています。

 

全高齢ドライバーの数はそれほど極端に増減していないので、残された主な可能性は、高齢ドライバーの運転技能が向上したか、マスコミ報道や社会政策等によって、高齢ドライバーの運転時間や走行距離が減ったか、あたりになります。付け加えると、この死亡率の低下には、認知能力の低下を含んだ特に運転技能の低い人(特に危ないドライバー)が、免許保有者数の低下に表れない程度の件数と思われますが、選択的に免許を返上したことも影響していると思われます。ただし、これは、後者の原因と類似していますので、後者に代表させたと考えればここで特別に項目として取り上げる必要はないでしょう。

 

さて、いくらマスメディアが「高齢ドライバーの事故が急増しています」と報道したり、行政が呼びかけたりして当事者達の自覚が高まった可能性があるせよ、“外部からの呼びかけ”で「高齢ドライバーの運転技能が1年に20%以上も死亡事故を減らせるほど向上する」とは考えにくいでしょう。

 

となると、消去法で残るのは、それら“外部からの呼びかけ”は、高齢ドライバーに運転行為自体を控えさせ(免許を保有したまま、誰かに乗せてもらうことが多くなり)、統計的に、高齢運転者一人あたりの走行距離が大幅に減った可能性です。

 

オンデマンドバスや乗り合いタクシー等の社会政策の進化もそれを後押ししたと思われます。

 
 

以上の理由で「高齢ドライバーの(謂わば)ペーパードライバー化が進んだ」と推測できます。

 

「80歳代のドライバーと30歳代のドライバーでは、同じ走行距離あたりの死亡事故を起こす確率が数十倍も違う」と推測できる理由

もちろんこちらも、直接証明するデータはありません。

 

しかし、記事の元データとなっている警察庁の統計からは、30~34歳がドライバーの場合の死亡事故率と、85歳以上がそれの死亡事故率とを比べると、後者は前者の約7倍もあることが読み取れます。ちなみに85歳以上ではなく80~84歳の場合は約5倍です。

 

さて、たとえば、30~34歳のドライバーと、85歳以上のドライバー、それぞれの平均の1ヶ月の走行距離はどれぐらいでしょうか?あるいは両者の差はどれぐらいでしょうか?

 

30~34歳と言えば、壮年期も壮年期、バリバリのバリバリ世代です。一般道を月に数千キロ走行している人もザラにいるでしょう。対して85歳以上は?

 

ざっと見積もって、両者の単位免許数あたりの走行距離は7倍ぐらいあっても全く不思議ではないでしょう。

 

となると、7倍×7倍≒50倍、つまり、走行距離を含んでいない30~34歳のドライバーと85歳以上とを比較した死亡事故率の違いに、両者の走行距離の違いを掛け合わせると、約50という数値が浮かび上がってきます。両者の死亡事故を起こす確率が、同じ走行距離あたり約50倍の違いあっても全然不思議じゃないということになります。

 

走行距離の違いは7倍どころではなく10倍かもしれません。また、30~34歳と80~84歳とを比べても、かなりの違いがあるでしょう。

 

ということで、「80歳代のドライバーと30歳代のドライバーでは、同じ走行距離あたりの死亡事故を起こす確率が数十倍も違う」と推測することに、ある程度の蓋然性はあると言えるでしょう。

 

かなり、重大な内容だけに、あらためて統計的に正しい根拠を得ることに、社会的にかなりの必要性があると言えるでしょう。

 

現状は、統計的な根拠がないので、表立って「80歳代のドライバーと30歳代のドライバーでは、同じ走行距離あたりの死亡事故を起こす確率が数十倍も違う」とは言えず、2019年10月29日に総理大臣官邸で開かれた未来投資会議では「75歳以上のドライバーによる死亡事故は、75歳未満の2倍以上」との報告がなされるに留まっています

 

もし、冒頭の(3)が統計的な事実として報道されれば、様々な政策が変化するでしょう。既に、自動ブレーキ車限定免許の導入は決定的ですが、(3)が認定されれば、補助金額等にはっきりとした影響を及ぼすでしょう。

 

今後、団塊の世代が後期高齢者となり、やがて80歳代を超えてゆくと、高齢ドライバーによる死亡事故が激増しかねません


ということで、あらためて書きますが、
年齢層別、単位免許保有者あたり、単位走行距離あたりの死亡事故率の統計データが、取得されるべきです。

 

比較的容易に年齢層別、単位免許保有者あたり、単位走行距離あたりの死亡事故率を算出する方法

 

何故、現状、、年齢層別/単位免許保有者あたり/単位走行距離あたりの死亡事故率の統計データがないのか?

 

それは、簡単に言えば、昔は技術的に各車の走行距離データを収集できる筈もなく、現在もその流れのままで、元データの収集すら、なされていないからです。

 

もちろん現在は、皆さんご存知のとおり、技術的には、各車にGPS付き発信機を取り付けることで、走行距離データを収集できます。

 

既にGPS付き発信機を付けた車が多数走っています。通信機能付きのカーナビとかカーナビアプリを稼働させているスマホはGPS付き発信機です。しかし、これらの搭載車種やそのドライバーの年齢層には統計的に大きか偏りがあることが明らかです。これからも古い車が多数走り続ける中では、車社会全体でその偏りが無視できるほど小さくなる可能性は向こう20年はないと言えるでしょう。

 

また、統計データ取得の為に国内全車にGPS付き発信機を配る、なんてことも予算的にできる筈がありません。

 
 


現実に可能性がある方法は“合わせ技”を用いる以下のようなものです。

 

1) 年齢層別単位免許保有者あたりの走行距離の統計データを取得する為のサンプル調査をおこなう
死亡事故率は小さいので事実上サンプル調査はおこなえませんが、単に年齢層別の走行距離ならサンプル調査で十分です。政府が主体となって実施したいなら、それでいいでしょう。国内全車を調べたりしたら、たいへんなプライバシー侵害となりますが、同意が得られた人・車を調査するだけなら、そこはクリアできるでしょう。そして「同意が得られた人・車だけ」の調査であっても、「統計上、問題ない」との判定が下るでしょう。今までデータが取得されていなかったことを考えると、サンプル数はそれほど多くなくても、得られる価値は十分に大きいでしょう。信頼度90%は要りません。ただそれでも、各地域毎の違いを加味する為に全国で調査すると総サンプル数は相当な数になるでしょう。

 

2) 1.と、従来からの死亡事故率を含んだ統計とを合わせて求める統計を作る
1.と従来からの「原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たりの死亡事故件数の推移」と照合し、あらたに「原付以上運転者(第1当事者)の年齢層別免許保有者10万人当たり、走行距離100万キロ当たりの死亡事故件数の推移」を算出する

 

この“合わせ技”を用いるしか実現性はないでしょう。

 
 

ちなみに、現在、高級ナビ・メーカー、自動車メーカー、スマホナビ・メーカーがそれぞれの顧客のナビから送信された走行データを収集していると思われます。そのうち、ナビ・メーカー、自動車メーカーが持っているデータについては、常時稼働の為にある程度信頼性がある筈で、許諾条件によりますが、どこかの大学の先生とかがビッグデータとして提供を受け、さらに独自の補正・補完を重ねることで、「おおよその年齢層別、単位免許保有者あたり、単位走行距離あたりの死亡事故率」を既に算出している可能性はあります。でも、これだと、かなり大幅な補正・補完が必要だった筈で、参考資料にしかなりえません。やはり、統計を算出する為の偏りの少ないデータを取得する必要があります。

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