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2019年12月13日 (金)

スーパー台風が来襲する時代のダム操作手順を考える

 
スーパー台風が来襲する時代、このままでは巨大ダムでも毎度のように緊急放流がおこなわれることは必至で、非常に危険。
緊急放流の危険性を緩和する最も手っ取り早い手段は、ダムのゲート操作手順の工夫。本ページではそれを紹介する。超・極端豪雨の際は、突然の放流量増加が防げる、本ページで紹介するようなゲート操作手順の採用が望ましいと思われる。
その他、これからの治水に関する考え方を紹介する。

(2019-11-29追記)既に台風19号の際に一部のダムで本ページが提唱する“緩やかな(緊急)放水”の手順を“一部”実践した例もあったようです。ただし、あくまで従来の操作手順の範囲内の作業であって、緊急放流を開始した時点で既に8割以上の貯水率に達しており、放流開始から流入量と釣り合うまで放流量を増やすまでにかけた時間は2時間半程度に過ぎなかったようです。私が提唱している方法はもっと貯水量が少ない段階から、もっと時間をかけて放流量を増やす方法です。
私自身の本音としては、ダムに治水を頼ることは、想定を大幅に越える雨量があった場合に下流に放たれる流量が不連続になることが避けられず、システムとして“美しくないし、脆弱”だと考えています。しかし、既に多数のダムが存在してしまっているわけですから、その既存のダムの欠点を穏やかにして、ダムと共存する方法を探ることにも一定の価値があると思い、本ページを記述しました。

 

たとえば八ッ場ダムの場合、建設地点の計画高水流量※は3000トン/秒です。
ダムの総貯水容量は1億トン余りですが、本格運用後は、利水の為に常にある程度水量を残しておかなければならないため、洪水調節容量(治水に使える量)は6500万トンです。

 

※正確に説明すると長くなりますが、簡単に言えばダム建設前の状態で最大流量として計測ないしは推定されていた数値です。

 

ちなみに先日の台風19号が来た時点では本格運用前どころか、試験湛水を初めた直後だったので、ダムはまだほとんど空っぽで、洪水調節容量を越える水量を治水用として使えました。

 

最大放流量は1000トン/秒なので、最も流入量が大きいときは差し引き3000-1000=2000トン/秒で貯水量が増えるということになるでしょう。

 

そして、6500万/2000=32500秒≒9時間なので、もし最大流量が9時間続いたとすれば、その9時間だけで八ッ場ダムが満杯になる計算になります。

 
 

先日の台風19号での最大流量は2500トン/秒だったということです。それがどれくらいの時間続いたのかはわかりませんし、本格運用後と違って放流量を上げなかった(1000トン/秒にしなかった)可能性が高いですが、兎にも角にも、この台風に伴う雨だけでダムに洪水調節容量を越える7500万トンの水が貯まりました。

 
 

しかし、確かに台風19号は巨大台風でしたが、気象学者が将来高い確率で日本を襲うと予想している“スーパー台風”と比べれば小型です。仮にスーパー台風が台風19号と比べて同じ時間あたり2倍の流入量をもたらすとすると、最大流量は5000トン/秒前後ということになります。最大放流量が1000トン/秒のままだと差し引き5000-1000=4000トン/秒で貯水量が増えるということになります。

 

そして、この場合は6500万/4000=16250≒4時間半なので、わずか4時間半で巨大な八ッ場ダムが満杯になります。人が避難しなければならないことを考慮すると、これは“あっという間”と呼んでもいい時間です。

 
 

実際には、満杯になる前に、緊急放流などの手段で貯水率を下げるか維持する必要があります。そうしなければ越水してダムが破壊される危険が高まるからです。しかし、緊急放流も危険とされていますし、現に西日本豪雨の際は多数の死者が出ています。

 
 
 

さて、ここまでで私がまず何を言いたいかというと、

 

現在のダムの運用方法のままだと、スーパー台風来襲の際には、どんな巨大ダムでも「緊急放流」をおこなう事態に陥る

 

ということです。トータルの流入量があまりに多すぎて、どんな巨大ダムでも溜めきれず、今までの“とにかく溜める”運用は物理的に実施不可能となってきました。どうしても「緊急放流」的なものを、行わざるを得ません。

 


となると、どうせ「緊急放流」があるなら、それをもっと安全にできないか、考えてみるべきです。

 


まず、指摘したいのは、現在の「緊急放流」は、一応「流入量と放流量は同じ」とされていますが、ダムが満杯近くになってから開始された「緊急放流」は、開始直後の放流量が、ゲートの構造上、ほぼ必ず、流入量を上回る筈です。確実に流入量と放流量が釣り合うのは、ダムの貯水面の高さが緊急放流ゲートの、ゲートをくぐり抜ける水面の高さと一致するまで下がった時の筈で、それまでは放流量が流入量を上回る筈です。

 


緊急放流が開始された際に突然、それまでと比べて放流量が急に増えることは危険ですし、放流量が流入量を上回ることも危険です。このどちらも解消すべきです。

 


ただ、普通に考えれば、既存のダムのまま、運用の見直しだけで、両者を同時に完全に解決することは困難です。

 


後者だけを解決することは簡単です。水位が上がる前から放流ゲートを全開にしておけばいいのです。水位がゲートに達した瞬間から放流すればそれ以上貯水が高くなりようがないので、放流量が流入量を上回ることは、ほぼありません。ただし、この場合の放流が開始される際の放流量の立ち上がりはかなり急激なものとなり、これ自体が危険をまねきます。

 


両者を放流ゲートを増やさずに完全に解決することは無理ですが、“ほぼ解決”するのであれば、徐々に放流量を流入量と釣り合うまで上げる間は水位がゲートより高くなることを許容し、放流量がほぼ流入量と等しくなった後も、もう少し放流量を増やし、それによって徐々に水位を下げ、水位がゲートの頂部より下がった時点で、ゲートを(徐々に)解放する、という複雑な制御をする方法が考えられます。この方法は厳密には一時的に僅かですが放流量>流入量となります。

 


箇条書きすると、

  1. 初めから少しだけ放流ゲートを開いておく
  2. 放流ゲート下端に水位が達し、自然に放流が開始されたら、徐々にゲートをさらに開いていく
  3. 放流量が一定の割合で増加するようにゲートを制御し続ける
  4. 放流量は徐々に増えるが、まだ放流量<流入量なので水位は徐々に上がってゆく
  5. ついに放流量が流入量を超え、水位が徐々に下がり始める
  6. 今度は一定のペースで水位が下がるようにゲートを調整し続ける
  7. 水位がゲートの位置にまで下がったら、水位が上下しないようにゲートを調整する(制御し続ける)
  8. 水位がほぼ安定していることが確認できたら徐々にゲートをさらに開き、最終的に解放する(水位はほぼ変わらない筈)
  9. それ以降は、何もしなくても自然と放流量=流入量が保たれる
 

スーパー台風などの超・極端豪雨の際は、突然の放流量増加が防げる、このようなゲート操作手順が望ましいと思われます。

 


もちろん、これは、通常、ダムの中上部あたりにあるゲートより上側の貯水量を利用しない“勿体無いダムの使い方”と言えると思います。こうなってしまう一つの理由は、緩やかに放流量を増加させる為に、放流開始時に貯水容量に余裕が必要な為です。他にもトラブル時の余裕を確保する為にもこのような使い方が望ましいと思われます。ただし、純粋な重力式コンクリートダムであれば、越水しても壊れる可能性は皆無といって良く、実は“緊急放流を全くおこなわない”ことでも、本ページで提唱するような、“緩やかな(緊急)放流”がある程度実現します。

 


ここまで、ダムの操作手順について書きましたが、あくまでそれは“小手先の対応”に過ぎません。上記のように対応したとしても、ある程度人工的な流量の変化が発生しますし、ゲート操作に頼れば頼るほど、ゲートが故障した場合の危険性が高まります。“超・極端豪雨時にはダムの貯水能力を頼りにできない”と指摘せざるを得ないでしょう

利水(工業用水、農業用水、生活用水)用として必ずしも必要のないダムは撤去し、その代わり、特に危険な地域からは住民を移動させ、要所の堤防は大型化する。そして大型化しない堤防も含め、居住地に関わる全ての堤防を越水しても破壊されないように強化する。

 

これが、地球温暖化が進んだ時代の、持続性のある水害対策だと思います。でも長年「ダムによる治水効果」を主張してきた政治家達が、急に姿勢を改めることは難しいでしょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「台風19号の際、八ッ場ダムは利根川の水位を17cm下げる効果をもたらした。間に合って良かった八ッ場ダム!、ダム万歳!」と主張する人がいますが、この主張には二重におかしな点があります。

 
  1. (事実とするならばですが)この利根川17cm分の貯水量は、空っぽに近かった試験段階の八ッ場ダムだったから実現できたことであって、今後の巨大台風の際に八ッ場ダムに水を貯めるとしても、17cmについては“今回限り”です。
 
  1. 巨大台風の際にダムに水を貯めることは「緊急放流」が必要になる危険性が高く、運良く「緊急放流」せずに済めば恩恵がありますが、運悪く「緊急放流」が必要になった場合は災厄の素となります。つまり「17cm」は、別の危険性を引き換えにした“見せかけの安全、恩恵”に過ぎません。

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